前編はこちら↓
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〜新しい習慣と古い習慣〜
ほんの少しでもピアノとの距離や椅子の高さを変えると、とても違和感があり弾きにくいでしょう。慣れ親しんだ距離感は体に染み込んでいますから。
今までと違う体の使い方になるので、当然演奏も崩れてしまいます。
「ここ!」と思って手を置いても、全然違う場所にずれていたり、あちこちボロボロ。しまいには何を弾いているかすらわからなくなってしまうかもしれません。
でも、それを怖がらないでください。
実はこの混乱こそ、変化が起きた歓迎すべきサインなのです
思い切って、使い続けてみてください。
〜選択の自由〜
古いやり方は、それなりの安定感があり、安心感もあるでしょう。
これまで練習を積み重ねてきた結果ですから、自分の中での信頼度も高いはず。
なので新しいやり方が一瞬良かったと思っても、すぐ信頼度の高い以前のやり方に戻ってしまいます。
もちろん、それも構いません。
アレクサンダーテクニークは自分が主役。選択権も自分にあります。
これまでの習慣を大切にしたい、という選択肢もあります。
でも、もし別の世界を覗いてみたいなら?
今までと同じやり方では、決してその扉を開くことはできないでしょう。
〜より良い演奏のために、新しいやり方を選択する〜
そうはいっても、専門分野でいきなり新しいやり方を試すのは勇気がいるものです。
私が勉強を始めた頃、ある先生が「アレクサンダーテクニークはバンジージャンプだ」とおっしゃいました。
またある先生は、演奏恐怖症の人に「舞台にいったん出たとしても、演奏をしないで戻ってきたっていい」とおっしゃいました。
前者は人任せではなく、自分がそれをどれほど望んでいるか、常に問い掛け続ける大切さと、もし、やると決めたらやる(飛ぶ)勇気を持つこと
後者は、自分の行動基準は人に左右されない。そして自分を信頼し自ら選び決定することを伝えてくださったのだと解釈しました
私は可能な限り、新しいやり方を選ぶようにしました。
しかも本番で。(本当にバンジージャンプの気分でした)
以前の価値観に照らし合わせると(この辺りの思考に関しても変化が起きつつありました)
明らかな失敗も数多く。。
ただ興味深いことに、失敗しても達成感がありました。
なんとなくやって失敗したのではなく、一つずつ手順を丁寧にこなしていったからでしょうか。客観的に、状況を受け止められるのです。
そうすると「なら、次はこうしてみよう」と前向きに考えられて、失敗を活かして先に進むという良い循環が生まれたように思います
〜アレクサンダーテクニークを演奏にいかす〜
ある時、演奏後にお客様から「あの部分がものすごく面白かった!」とお声をかけていただきました。
あの部分=明らかに失敗した部分でしたが、演奏中アレクサンダーテクニークを使い続けるよう心掛けていたので、とっさに曲調に合ったリカバリーができた箇所でした。
温かい言葉をかけてくださったお客様に感謝です。
新しいやり方への信頼度が私の中で高くなり、その後の励みにもなりました。
〜心身統一体〜
通常のピアノレッスン+アレクサンダーテクニークレッスンに「指のことだけではないの?」と最初は戸惑いを覚える方もいらっしゃるかもしれません。
海外ではアレクサンダーテクニークの授業を取り入れている音楽学校、演劇学校が多くあります。ピアノでいえば、手先だけではなく心身統一体として全体を見ていくことが重要視されている証だと思います。
先にも少し触れましたが、思考の変化が及ぼす影響は決して少なくありません
わかりやすい例だと「家ではできたのに、先生の前だと失敗してしまう」経験は誰でもありますね
先生の前だから、失敗できない、してはいけない、うまく弾きたい、などリラックスして自宅で弾いているときとは違う考えが、頭をよぎっています。
それに影響されて、リラックスモードとは違う体の状態になっています。練習不足だとさらにこの状態に拍車がかかります。
心と体は切り離せません
楽器奏者の場合は、たとえアレクサンダーテクニーク初心者でも、音情報があるので、ご自身の変化がわかりやすいと思います。
美季さん、開眼させて下さってありがとうこざいます!」
この時は対面レッスンだったので、Hands onというアレクサンダーテクニーク特有の手を使いながら、サポートさせていただきました。
一緒に模索した新しいやり方なら、手の痛みを感じることなく弾き続けられそうだとの感触を得てくださったようです。
この後もYさんは本番でバンジージャンプ実験(!)を繰り返してくださっています。
それ以外の場面にも応用してくださっているので、そのご報告をいつも楽しみにしている私です。