レッスン便り

<ピアノ演奏時の手首の痛み> ピアノ講師Yさんのレッスン(前編)

Yさんはピアノ演奏に関して長いこと抱えている悩みがありました。

それは右手首の痛み。

普通に弾く分には問題ないのですが、音数の多い曲を弾くと手首、とくに親指側が悲鳴をあげ始めるとのこと

しかも中学生の頃からというのですから、どれだけ我慢していらしたのかと思うと辛い気持ちになります。

Yさんと私は同世代ですが、当時、身体の使い方などついてはレッスンでさほど取り上げられてなかったように思います。

そう思うと、私が小2の頃から長年師事していた先生は、かなり異色だったかもしれません。「ぬく」が口癖で、細かい説明はなく、とにかく打鍵の後に手首周辺が固まらないように、ひたすら「ぬく」を徹底指導なさる方でした。

今となっては本意を伺うことはできませんが、そのご指導のおかげか、幸いにもこれまで手や腕を痛めたことは殆どありません。

しかし一般的には、もし痛みがあっても気合でカバー、ましてや先生に「痛いから休みます」とは到底言えない雰囲気がありました。

Yさんはご自分の生徒さん達にはそんな思いをさせたくないと、アレクサンダーテクニークについての本を時々読んでいらしたそうです。

〜アレクサンダーテクニークを演奏に活かす〜

ところが書籍を読んでも、今ひとつわからない。
なんとなく理屈はわかったような気もするが、演奏への活かし方がよくわからない…ということで私とのレッスンをご希望くださいました

ピアニストにとっては普通のことですが、初心者や、ピアノ以外の楽器奏者の方にこんな風に言われることがあります。(ピアニストあるある)

「ピアノ譜面は音が多いですねぇ!?楽譜がまっ黒。」
→まっ黒かどうかはさておき、確かに同時に多くの音を鳴らせますね。

「左右手が、別々の動きをするのが不思議」
→これは「皆さんもお食事の時は、片方でお箸、片方でお茶碗を持っていらっしゃるじゃないですか〜若者なら歯磨きしながら、スマホ操作とか出来そう。生活の中で両方同じ動きの方が珍しいように思いますよ」とお返しするのですが…
まぁ、それより複雑な動きではありますね。
ペダル使用時は左右足も付いてきます。

いやはや慣れとは凄いですね。
ピアノは幼少期から習い始める方が多いのでなおさらかも知れません。
しかしこの慣れが好ましくない影響を与える場合もあります。

ピアノとの距離です(座る位置)

〜自分のサイズを知る〜

成長と共に身長が伸び、手足も長くなっているのに、ピアノとの距離は昔のまま。
意外と多くいらっしゃいます。

楽器の置いてある環境によって影響を受けている場合もあります。
(生徒さんご自宅とのオンラインレッスンでその事実が発覚した方も!)

やや窮屈な体勢のまま、指の動きだけに気を取られ演奏しようとすれば、どうしても手腕へ負担がかかります。
どこかに痛みが出ても不思議ではありません。

ピアノは音域も広い楽器ですから、弾きこなせばオーケストラのような表現も可能です。
繊細なタッチコントロール、幅広い音の強弱etc.
これらを実現するためには手先だけでは到底無理で、体全体をどう効率よく使うかを考える必要があります。

その第一歩がピアノとの距離、座り方の見直しです。

(後編に続く)