レッスン便り

<本番で実力を発揮するために> チェリストYさんとのアンサンブル/準備編①

「あんなに練習したのに、本番うまくいかなかった」

皆さんも一度くらいご経験があるのではないのでしょうか?

練習不足なら諦めもつきますが、一生懸命やったのに結果が思わしくないとがっかりしてしまいますよね。

〜過去のワークショップで〜

以前『本番で実力を発揮するために』をテーマにWSを開催した時のことです。

まず受講者の皆さんに
「“本番”と聞いて、頭に浮かぶのはなんですか?」と問いかけたところ、
ほぼ全員から「緊張」「うまく演奏しなければ」「間違えてはいけない」という答えが返ってきました。
なかには本番を間近に控えている方もいらっしゃったので、切実な言葉です。

このWSでは“緊張とはなんぞや?”を紐解くところからスタート。
それからアレクサンダーテクニークのお話を交えながら、本当に必要な準備について検討、最後に実践。(可能な方は衣装着用、なるべく本番同様の環境で)各々ご自分の演奏と向き合って頂くところまでを取り上げました。

〜必要な準備とは?〜

「緊張」そのものが悪いわけではありません。適度な緊張は必要です。
けれど、不要な緊張はパフォーマンスの質を下げます。
それを生み出すのは不安です。

不安のもとは、演奏技術面はもちろん、それとは直接関係がないところにも潜んでいます。
「必要な(目的に合った)準備」とは、このような面にも目を向けてこそ、なのです。

かくいう私も、それを見過ごし何度落とし穴にはまったことか。
後から思い返せば、理由は明白。
結局のところ準備をしたつもりになっていただけで、不十分だったのです。 

本番では何かしら想定外の事が起きます。
ゆえにその場、その瞬間での対応力は不可欠!
うまく切り抜けられるかどうかは、準備の質に左右されるといえるでしょう。

さて、ここからは私の体験談です。
なにかのご参考になると良いのですが。。

〜本番3ヶ月前、はじまり〜

Yさんから伴奏依頼をいただいたのは、本番の3ヶ月前でした。
頭の中に浮かんだ事をつらつらと並べてみると以下の通り。

*演奏曲は超有名曲(ミスが目立ちそう)
*私もYさんも初挑戦曲(しかも大曲)
*プログラム順は大トリ(一番最後?失敗できない)

*会場はほぼ初めて(年十年も前に行ったきり)
*当日ピアノに触る時間は殆どなし(ピアニスト泣かせ)
*初顔合わせの方々二十数名(先生もいらっしゃる門下生発表会)

ちなみにカッコ内は心の声=不安のもと

冒頭のWS参加者の方達と同じような事を思っていますね、失敗できない、とか。

私にとって、いろいろ初めてづくしのお仕事でした。
新しい環境は’期待に満ちた場’ではありますが、それゆえ無駄な気負いや力みが生じがち。
また無意識のうちにプレッシャーを感じ、思うような演奏ができなくなる可能性も大(数々の失敗から学んだ教訓)

ですから、演奏内容と同時に、それ以外の面にも目を向け、意識的に丁寧に「準備」する必要があると考えました。
演奏環境が自分にとって安全で心地良い場所だと納得できれば、無駄な緊張をしなくてすみます。
そのために不安要素はなるべく事前に取り除いておきたいですよね。 

立ち止まり、自分の思考を少し整理するだけで、思いこみ(不安のもと)から開放されることもあります。
それらを試してみました。

準備編②へ続く