レッスン便り

<自分の声を知りたい> 会社員Eさんのレッスン(前編)

「自分の声を知りたいんです」

Eさんはレッスンにいらっしゃる動機をそう話してくださいました。

会社では責任ある立場で部下を前に話す機会が度々あり、その時の声の使い方や、趣味のスイミングでの息継ぎなど、声や呼吸にまつわる事柄に関心を寄せていらっしゃるようでした。

〜『声』とは何か?〜

まず『声』とはなんでしょう?
殆どの方は、そんなこと考えたこともないでしょう
せいぜい風邪をひいたり、カラオケで歌いすぎたりして、いつもと違う声になると「あれ、変だぞ?」と気になる程度。

しかし専門的に『声』に関してもっと知りたい!となれば
呼吸、声帯、喉、口の中(喉頭、口腔、咽頭etc.)さらに体全体についてなど、とても奥深い分野です。
(この辺りはまた別の機会に取り上げるとして…)

最初の問いかけに戻ります。
『声』とは何か?
声は空気の振動です。
おおもとは肺から外に出る息なので
呼吸ありき、ということです。

〜呼吸、息の流れ〜

そんなわけでEさんにまず最初に取り組んで頂いたのは、ご自分の息の出入りを観察していただくことでした。
とは言っても、日頃無意識にやっていることをあえて観察しようとすると、どうしても固くなってしまいますよね。

でも、いいんです。
これが正しい、とかダメ、ということはありません。

今まで真っ暗で何も見えなかったところに、スーッと光が差し込めば良いのです。
薄明かり、ぼんやりとでも、何か一つ気付けると、ひとつ、またひとつと情報が増えていき、その先へ進めるようになります。

Eさんはしばらくご自分を観察したのち
「息を吸うときに、胸上部や首の後ろあたりが力んでいるように思う」と仰いました。
確かに私にも、その様子が見えました
(ご本人の感覚と、実際に起きていることが必ずしも正確に一致しているわけではないので、サポートする側も慎重に見極める必要があります)

その情報をもとに(その部分に直接働きかけるのではなく)アレクサンダーテクニークを使いながら、間接的にアプローチしていきます。
体全体を動かし、ほぐしたのち、次のことを試していただきました。

******

まず、息を吐きます
(体全体はゆったりと。力まず、吐き切れる程度まで)
そして、何もしない
(ここが重要です!)

するとあら、不思議!
そのあと(はじめに観察した呼吸時より)自然に息がふかく入ってきました
吸気と同時に動く体の部位も、ずいぶん違います

〜大きな気づき、自分を知る〜

ここでEさんはハタと気づきました。

…とにかく息継ぎが苦手なスイミング
そういえば、一生懸命吸うことばかり考えていた。
でも吸っても吸っても何故か息がどんどん浅くなっていき、体が沈んでしまっていた。
吐くことはちっとも考えていなかった!…

Eさんご自身がこの気づきにたどり着き、言葉にし共有してくださった時、私は感服しました。
息継ぎのことを日頃から探究なさっていたからこその気づきだと思いました。
少しのきっかけで、次のステップに進むヒントを手になさいました。
苦手意識の克服に向かい、一歩踏み出せた瞬間です。

〜新しいやり方〜

実際に泳いでいらっしゃるところを拝見したわけではないので、あくまで想像ですが、おそらく「息をたくさん吸い込みたい」と思うあまり、上体や腕の力みなど、呼吸にとっても泳ぎにとっても不利な状況を作り出していたのだと思います。
今後は、息をどう吐いているか?の観察も含め、息継ぎに必要な動きを整理してみるのも良いかもしれませんね。

と、ここまで書いて、呼吸のことでお話が終わりそうになっている事に気づきました(笑)

実際のレッスンでも、予想外の展開になることはしばしばあります。
(私の脱線癖のせいだけではない、と思いたい)

その瞬間に知りたいと思うことが湧き出てきたら、蓋をする必要はありません。巡りめぐって全て繋がっていくので、無駄なことは一つもないからです。

その後Eさんから嬉しい感想も届きましたので、声のことと絡めて、後編でご紹介いたします。